「派遣か正社員か」というお話ですが、先ず始めに、そもそも何を以って「正」なのかの解釈が曖昧で多様なこと、また、雇用形態がどうあれ、組織の構成員の一人として業務に従事する社員であることには何ら変わりはないこと、更に、請負も含め、現在では多種多様な働き方がある中で、「派遣か正社員か」という二者択一の狭い視点・表現では本質を見誤ってしまう可能性があることにご留意下さい。その上で、敢えて両者を比較対照するならば、大きく分けて、二つの視点があるかと思います。
ひとつは皆さん周知の雇用待遇に関する視点です。終身雇用など望めない今となっては、雇用の安定性を比較するのはナンセンス(本来ならば「有期雇用」でない雇用を「正社員」と看做す)ですが、収入の多寡については、現実問題として、正社員に有利性(派遣会社が得る手数料分、賞与・インセンティブ、更には福利厚生などの比較対照に於いて)があることは否めません。反面、時間的な拘束という点では、一般的に派遣、他の有期雇用契約の方が柔軟で、仕事と私生活の時間的な区切りは付けやすいと言えますから、私生活を充実させたいという方には、こちらの方が適した働き方なのかも知れません。
もうひとつは「自分の進むべき道」という視点です。つまり、自分が何をしたいのか、どうキャリアを重ね、どのように生きて行きたいか、ということですね。
ここ数年、所謂「正社員」としての求人は、将来的に経営層や管理層を担う人材(所謂「総合職」)に絞られ、実務の現場には即戦力たる専門職を派遣や契約、請負という形態で配置する傾向が顕著です。つまり、これを逆読みすれば、前者の志向のある方は正社員という働き方を選択すべきであり、後者の志向のある方は非正社員としての働き方を選択すべきである、という解釈が成り立ちます。もっと柔らかく申し上げるなら、「経営に興味がある」とか「リーダーとして人を導いて行きたい」などの場合は前者を、「専門分野を極めたい」「手に職を付けたい」などの場合は後者を、ということですね。
ただ、いずれにも落とし穴があるのが実社会の厳しさです。正社員を選択した場合、当然ながら人事異動や転勤が付きまといます。様々なポストを渡り歩くことで、自分が何をしたいのかを見失うことも・・・。「ふと気付いた時には会社の下僕になっていた」という危険性も大いにあるわけです。また、与えられた仕事しかせず組織にぶら下がっていたような場合、ひとたびリストラに直面すると、「何もできない人」になってしまいます。一方、派遣をはじめとする非正社員としての働き方を選択した場合、仕事内容や職場を選んで行けば、専門的なキャリアを築いて行くことが可能ですが、その為には高いプロ意識や緊張感の持続、自分に対する厳しさ、仕事環境や人間関係の変化に対する柔軟性が必要不可欠です。「残業が嫌」とか「仕事に責任を持ちたくない」「対人関係が苦手」などの甘えがあっては、こちらも結局は「何もできない人」になってしまいます。ご注意を!